白地に青の、この花を見ていると、ふと心のどこかの一部分だけ、
ひょいと昔にタイムスリップしたような、不思議な気分になった。
この感じは一体何だっただろう、と考えに考えたのだが、その時は思い出せずにいた。
それが今、ひょんなきっかけで心に浮かんだ。
浴衣だ。夏のうんと暑い日に着る、浴衣のイメージ。
最後に浴衣を着たのは、確か7-8年ほど前のこと。
何人かの友人たちと、慣れない着付けを気にしながら花火大会に行ったのを、
まるでつい一年前のことのような鮮明さで覚えている。
余りの人の多さに橋の上で身動きが取れなくなったことも、
やっとの思いで買ったビールの喉を通る時の冷たさも、そして花火の美しさも。
あの時の仲間は今でもとてもとても大切な存在で、きっとそれはこれからも変わらない。
その時の浴衣と、花からの連想で脳裏に浮かんだものとは似ても似つかない上に、
未だ肌寒い日の多いここドイツでは、日本の夏の空気を想像することすら難しいというのに、
あの蒸し暑い日本の夏がどうしようもなく恋しくて、
そんな日に涼しげな浴衣を着て、下駄をカタカタ鳴らしながら、
大きな花火のあがるのを眺めつつ、またあの橋を渡りたい、と無性に思う。
花束を。
音楽をやっている関係上、昔から花束を頂く機会は少なくなかった。
発表会、コンサート、誕生日、卒業式…。
幼い頃はおそらく「花より団子」であった私も、
今となっては、甘い香りと美しい色で目を楽しませてくれる、
そのほんの短い間を、儚くもこの上ない幸せだと感じるようになった。
花束にまつわるエピソードは数多くあるけれど、
中でもこれまでで一番思い出深いのは、ふらりと散歩に出た恋人が、
これまたふらりと戻ってきて、「綺麗だったから」と手渡してくれた、数輪のバラ。
とても花「束」と呼べるものではなかったけれど、記念日でもないのに、
ただ綺麗だったから、それだけの理由で買ってきてくれたことに、
きっと私は静かな衝撃を受けたのだろう。
ささやかな(大層なものではダメなのだ)、特に理由のないプレゼントは、
人を嬉しい驚きで幸福にする、と思う。
記念日には花束を。
記念日でなくてもささやかなUeberraschung(予期せぬ嬉しい驚き)を。
決して入り込んではならない場所があることを、
人は誰しも幼い頃から、少しずつ学んで来た筈なのに、
それでも時々、つい踏み込みすぎてしまうことがある。
興味あるものに近づきたくなる、それは本能。
それでも、侵してはならない領域があるのが、大人の世界。
何も考えず、ただただ前に突き進むことの許された、
そんな遠い日の我が身を羨んでも、何も始まらないのだけれど。
偶然街でバッタリ会った、元クラスメートたちとカフェへ。
特に頻繁に連絡しあうわけでも、さほど深い話が出来る仲でもないけれど、
久々に交わした言葉の節々から伝わってくる、温かい思いやりの気持ちだとか、
「キミを認めているよ」のサインは、私にこの上ない安心感を与える。
なんて気持ちの良い距離感なのだろう、と思う。
柵の内側に入り込まなくても済むヒントが、ここにある気がした。
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