ヨーロッパにいると、何故かよく道を聞かれる。
住み慣れた街で聞かれるならまだしも、初めての訪問先でも尋ねられることは少なくない。
どこからどう見てもアジア人の私より、すぐ側の明らかにヨーロッパの人間と思われる人の方が、
ずっとご自分の望み通りの答えが返ってくるでしょうに、と思ってしまうからだろうか、
笑顔で返せばよいのに、ついつい「残念ながら分かりません」と引きつった顔で答えてしまう。
旅の醍醐味って何だろう、と時々思う。
現実からの逃避?新しいモノとの出会い?それとも…?
その旅を振り返った時、ああ行ってよかったなと思えるのは、どういう時だったろう。
綺麗な景色、美味しい食事、素晴らしいサービス、そういうものに出会えた時はもちろんのこと、
訪れた地そのものの印象、それに何より、それを形成する人々との触れ合いがきっと重要なのだ、と思う。
ホテルやレストランの従業員、お店の販売員、バスや電車で乗り合わせた人、
街でたまたますれ違いざまぶつかってしまった人――――たとえそれらがただの旅行者であったとしても、
その地の構成員である彼らから受けた印象が、そのままその地の印象に繋がることは多い。
何か嫌なことがあっても、その後に誰かに温かい対応をしてもらえたら、
それだけでその街が好きになってしまう、なんてよくあることだ。
だから思うのだ。この人の、この街に対する印象は、私の言動ひとつで決まるかもしれない、と。
近所であろうと旅先であろうと、袖触れ合った人たちにはそんなちょっとした責任がある、
そう少しは自覚しなくては、と自分が旅に出る立場になると、いつも反省する。
とはいえ、なかなか実行できないのだけれど。
アムステルダム最終日。
帰りの電車に乗る前に寄った先は、シンゲルの花市。
大量にチューリップの球根を買い求めたはいいが、保存に失敗してほとんどを腐らせてしまった。
それだけが、この旅のちょっと苦い思い出、かも。