息つく暇もなかった、とはさすがに言い過ぎであるが、
三週間ほどの短い日本滞在は、移動ばかりで忙しいものとなった。
その合間を縫ってやって来たのがここ、広島県は宮島である。
10年ほど前に訪れたのが確か最後であっただろうか。
日本三景の一つだなんて、ここがそんなに言うほど良いのだろうか、
単に赤い鳥居が海の中に立っている、ただそれだけではないか、
当時の私はそうやって少々納得が行かない面持ちで、島を歩いたものだ。
が、今ならここの良さが分かる。私も歳を取ったということなのだろうか。
目に映る風景は、今も昔もきっと同じで、そこにあるものはさして変わってはいないのに、
こんなにも受け取り方が違うものか、と不思議な気持ちになる。
今だってやっぱり、「単に赤い鳥居が海の中に立っている、ただそれだけ」であるのに。
人が年齢を感じるのは、肉体や容貌の衰えなどといった、直接的なことだけではないようだ。
でもそれは決して不快なことでなく、寧ろ私にとっては歓迎すべき変化。
これから自分の好みがどうシフトしていくのか、そう考えるのも楽しい。
昔嫌だったものが好きになる、古いものに興味をそそられる。
歳を取るのも悪くない・・・かもしれない。