滑り込みセーフでやって来た最後の夏も、間もなく終わりを告げようとしている。
間もなくやってくるであろう長く暗い冬を思うと、気分が途端に滅入ってしまう。
少しでも光があるうちに、と少々焦りつつ、ちょっぴり遠出をすることに。
以前訪れたナミュールの街を気に入ったので、今回はその周辺にあるお城に行こう、ということになった。
が、何故かどうしても目標のN910という道路を見つけられず、高速道路を行ったり来たり。
随分時間をロスしてしまったなあ…と落ち込んでいたその時、私の目に飛び込んできたのは、
それはそれは美しい風景で、思わず「うわぁ」と言わずにはいられなかった。
お気に入りのナミュールにも似た街並み、それにプラス、ごつごつした白く巨大な岩肌に、
すっかり魅了されてしまい、急遽この街に寄り道していくことに。
後で分かったことだが、この時我々が高速の橋の上から見下ろしたのは、ディナンという街。
至る所にサックスの模型やら看板などをやたら見るなと思っていたら、
ここはどうやら、サクソフォンを発明したアドルフ・サックスという人の生まれ故郷なのだそう。
ムーズ川(ナミュールに似ているはずだ、同じ川沿いなのだから!)の側のカフェはどこも満員で、
駐車場には何台もの観光バスが停まっているところをみると、シタデルと教会以外、
特にこれといって見るものはなさそうな小さな町とはいえ、ここはちょっとした観光地らしい。
今回は時間がなくて、車でぐるりと廻っただけになってしまったのが本当に残念。
機会があれば、ゆっくり川沿いを散歩して、美味しいレストランでも開拓したいところだ。
写真は心惹かれた岩肌。が、車を降りてみると、ん?なんだかイマイチ。
(でもこの二枚の巨大な岩は近づくと圧巻。その狭い間に車が通るのだからちょっとびっくり)
ここは是非高速道路から見下ろしください。本当に美しいから!
…ひょっとして、車で通り過ぎるほんの一瞬の間だったから、そう感じただけだったりして。
ちなみに
これです、高速道路は。ここからの一瞬の眺め(笑)が最高です。
格子窓の向こうから、いい音が聴こえてくる。
それが誰のものかも知らずに、いい気分でしばらくベンチに腰掛ける。
本当に人間のできた人というのは、こういう人を言うのだろう、彼に出会ってそう思った。
その世界では知らぬ者はいない、という有名人に、つまらない世間話を聞かせた挙句、
「あなたは何をなさっているのですか」などという失礼な質問をしてしまった私に
優しく穏やかに「僕はね…」と答えを返してくれたのだから。
帰り際、また会いましょうね、と交わした手のぬくもりを、私は忘れない。
その日の夜、舞台に立った彼を見つけて、どれだけ驚いたことか。
そして、演奏を聴いて、更に驚いた。と同時に頬が緩んだ。
ああ、あの素敵な音は、彼のものだったのだなと。
生まれて初めて日本を出て、海を越えて辿り着いた街がここだった。
あれからもう、片手では数えられないほどの年数が経ったけれど、
街、というより村という方がしっくりくるこの風景は、あの時と何も変わっていない。
というよりそれだけ、見る者の方に成長が見られない、ということだろうか。
おそらくもう再び、この地を訪れることはないだろう。
それでも、ここで感じた喜びや痛みも、ここのきりりとした空気もじりじりとした陽射しも、
料理の味もワインの香りも、誰かとの出会いも別れも、
こうやって少しずつ切り取っておきさえすれば、きっと思い出す、
そんな思いでいつもシャッターを切る。
すぅーっと写真の中に吸い込まれて、遠く日本で、私はまたこの石畳を歩くだろう。
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