わたしが前回ベルリンへ行ったのは、ドイツに来てまだ間もない頃だった。
もう10年近くも前のことになるだろうか。
当時のルームメイトに誘われるまま、なんとなく付いて行き、
なんとなくぐるりと観光地を廻っただけで、特別な感動もないまま、
またいつもの暗い日常に戻った、そんな記憶しか残っていない。
あの頃はまだ、旅自体に関心もなければ、何かを書き残す術も知らなかった。
そもそも、記しておきたいという思いすら、微塵も湧き出てなかった。
右も左も分からず、一人ただ、この国での生活と言葉に慣れることに必死で、
そんな余裕なんてなかったのだと思う。
そのせいだろうか、ベルリン、と聞くとつい、頭の上に暗雲が垂れ込めるような、
どんよりとした気持ちになってしまう。
季節が悪かった(コートが手放せない寒い時期だった)のもいけなかったのだろう、
思い通りにいかなくて辛かったドイツで最初の冬を、どうしても思い出すのだ。
自分の意志でやってきたのに、自ら望んで選んだ道なのに、
どうしてこんなに苦しいんだろう、と自分でも不思議でたまらなかった。
そして今回、二度目のベルリン。
願わくは、前回と同じ場所を歩いて、今度は何を想うのか(もしくはまた何も感じないか)、
是非試してみたかったのだけれど、それも諸事情で叶わなかった。
印象としては、相変わらず街のあちこちが工事中だということぐらいか。
中心部はますます栄え、郊外はいつまでたっても開発が追いつかない。
街が広すぎて手がまわらないのだろうが、街の外れはどこも荒んでいて、
時々ここがドイツだということを忘れそうになった。
おそらく10年経っても、その風景は変わらずそこにあるに違いない。
冒頭の写真は、前回も今回も訪れた唯一の場所である、ソニーセンターにて。
最終日、ここで食べたランチがかなり美味しくて、最後の最後に大満足。
そういえば、初日の夕食に適当に入ったインド料理屋も、
客はほとんどおらず、とても流行っているようには見えなかったのだけど、
随分と口に合う料理が出てきて驚いた(しかも相当に安かったのだ)。
街が大きい分、ドイツにしては食のレベルが高いのかもしれない。
おかげで、ベルリン=どんより、の図式とはさよならできそうだ。
めでたし、めでたし。
10年後にでも、またふらりと来られるとよいのだけれど。