この旅行に出掛ける前まで、ドイツは雨模様の日が続いていた。
鬱々とした気持ちを抱えながら旅立ったら、まるで季節が180度違うかのような、
ぴかぴかの夏日で、嬉しいやら、戸惑うやら。
寒いかも、とたくさん用意したセーターは、ただのお荷物となった。
そんな道中、最も暑さを軽減させてくれたのは、ここの水だったかもしれない。
正確には覚えていないけれど、チロル地方のどこかの川。
手を触れると、心臓麻痺を起こしそうなくらい冷たい。
そばで水浴びしている子供たちを、信じられない思いで見つめる。
きれいな水の中に、失礼します、とつぶやきながら、そっと足先も入れてみた。
清らかな流れは、見た目も温度も気持ちの良いもので、
この上なく幸せな気持ちにさせてくれるものだった。
川の水が、こんなにも冷たくて美しいものとは、今まで知らなかった気がする。