ここでの最後のクリスマスになるかもしれない、と聞かされたのは、
クリスマスマーケットが終わる前日のことだった。
覚悟はしていたものの、その衝撃は大きすぎて、未だ少しばかり動揺している。
当たり前に見ていたこの景色を、もうすぐ見られなくなると思うと、つい気分が塞いでしまう。
ホットワイン片手に皆が語らう様子もこれで見納めなのか。そう思うと、
いてもたってもいられなくなって、街へとび出した。
もちろん行き先は、クリスマスマーケット。
息子をメリーゴーランドに乗せつつ、わたしは今年何度目かのホットワインをゆっくり飲んだ。
何だか切ないような、哀しいような味がした。
ドイツの冬の朝の寒さは、わたしに否応なく、この国に来て最初の三ヶ月間のことを思い起こさせる。
孤独というものを最初に知ったのは、間違いなくあのときだ。
知る者は誰もいない。言葉は分からない。土地勘はない。日本への連絡手段は手紙だけ。
自分を追い込むため、望んでそういう環境に身を置いたとはいえ、
当時のわたしは、ドイツの冬空よりも暗かったと思う。
心配したホストマザーが度々外に連れ出してくれていなかったら、
今頃わたしはこうして生きていなかったかもしれない、とまで思う。
あれから丸9年が経とうとしている。
状況はまるで変わった。友人は増え、家族も出来た。多少のドイツ語は覚えた。
今ではどこへだって一人で行ける自信がある。日本へはメールだって電話だってしたい放題だ。
居心地が悪いはずがない。寧ろ、元居た場所に戻るのが怖い。本当に怖い。
どこだって住めば都となるのだ、と頭では分かっていながら、今ここを離れるのは辛い。
どうしようもなく。来年はどこで、どんな思いで、クリスマスを迎えているのだろうか。
クリスマスマーケットが終わる前日のことだった。
覚悟はしていたものの、その衝撃は大きすぎて、未だ少しばかり動揺している。
当たり前に見ていたこの景色を、もうすぐ見られなくなると思うと、つい気分が塞いでしまう。
ホットワイン片手に皆が語らう様子もこれで見納めなのか。そう思うと、
いてもたってもいられなくなって、街へとび出した。
もちろん行き先は、クリスマスマーケット。
息子をメリーゴーランドに乗せつつ、わたしは今年何度目かのホットワインをゆっくり飲んだ。
何だか切ないような、哀しいような味がした。
ドイツの冬の朝の寒さは、わたしに否応なく、この国に来て最初の三ヶ月間のことを思い起こさせる。
孤独というものを最初に知ったのは、間違いなくあのときだ。
知る者は誰もいない。言葉は分からない。土地勘はない。日本への連絡手段は手紙だけ。
自分を追い込むため、望んでそういう環境に身を置いたとはいえ、
当時のわたしは、ドイツの冬空よりも暗かったと思う。
心配したホストマザーが度々外に連れ出してくれていなかったら、
今頃わたしはこうして生きていなかったかもしれない、とまで思う。
あれから丸9年が経とうとしている。
状況はまるで変わった。友人は増え、家族も出来た。多少のドイツ語は覚えた。
今ではどこへだって一人で行ける自信がある。日本へはメールだって電話だってしたい放題だ。
居心地が悪いはずがない。寧ろ、元居た場所に戻るのが怖い。本当に怖い。
どこだって住めば都となるのだ、と頭では分かっていながら、今ここを離れるのは辛い。
どうしようもなく。来年はどこで、どんな思いで、クリスマスを迎えているのだろうか。
今年は、クリスマスらしいことといったら、せいぜいモミの木の枝でリースを作ったぐらいで、
雪も降らず、大して寒くもないせいもあってか、大して気分も盛り上がらず、
当然準備も捗らないまま、クリスマス当日を迎えることになった。
あろうことか、失敗するはずもないケーキまで酷い出来となってしまい、
世界中がハッピーな気分でいるであろうこの日、わたしはひどく落ち込んだ。
息子が口の周りをクリームでいっぱいにしながら、喜んで食べてくれたのが唯一の救いか。
おまけに風邪までひいてしまい、散々なクリスマス。
まあこんな年もあるか。
写真は街を華やがせてくれていたクリスマスの電飾。
白い雪の代わりに、せめて輝く結晶を。
苦手な11月を、今年は何とかやり過ごした、とホッとしたのがいけなかったのだろうか、
12月に入った途端、あれやこれやと難題が降りかかり、心身ともにクタクタな毎日を送っている。
この時期なので寒いのは致し方ないにしても、雨ばかり降るのでどうにも気が滅入ってしまう。
これで雪でも降れば、少しは明るくなるのだけれど。
今から溯ること数週間前。
ついに心に限界がきて、息子を抱きかかえて停留所で呆然と突っ立っていたときのこと。
その姿がよっぽど酷かったせいだろう、見るに見かねた一人の老齢の女性がわたしに話しかけてきた。
「旦那と喧嘩でもしたのかい?そうなんでしょう?」と。
思わず、いや、違うんです、実は・・・と初対面にも関わらず、ついぽろりと話してしまった。
話しているうちに、ずっと堪えていた涙がどうにも止まらなくなってきて、
人が大勢行きかうのも構わず、ただただ泣きながらその場に立ち尽くしていた。
気がついたときにはその女性は、わたしの目の前から消えていたけれど、
その頃には涙の分だけ何だか体も心も軽くなった気がして、少し楽になっていた。
同じ頃、一眼レフの調子が悪くなってきたので、カメラを修理に出した。
預けに行った先は、もう何十年もこの道一筋といった趣が漂う、古いアパートの一角だった。
優しい目をしたおじいさんが、少々世間話などしつつ、カメラを丁寧に見てくれている。
それだけで、凝り固まっていた心がほぐれるような気がしていた。
よいクリスマスを、とお互いに言って別れたあとのわたしには、きっと笑顔が戻っていたと思う。
袖振り合っただけの人たちに、どうやらこの冬は随分と救われたようだ。
辛いときほど、誰かのふとした言葉だったり笑顔だったりがありがたく思える。
こうして受け取った分、わたしもいつか誰かに返していかなければ。
写真は、不調な愛機に代わり、11月中活躍してくれた、コンデジによる一枚。
先月はこんなに光に溢れていたのか、と、つい一ヶ月前を遠い昔のことのように感じるのは、
峠を越した、ということなのだと思う。いや、そう思いたい。
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